17 瓜姫子と天邪鬼むかしあったけど。じんつぁとばんちゃど、いでやったど。ばんちゃ川さ洗濯に行ったば、川上から大きな瓜、ドンブリコ、ドンブリコと流れて来たど。それから、 「こんなうまそうなな、拾ってじんつぁと食うべ」 て思って、そして家さ持ってきて、割る気になったば、瓜の中からかわいい女の子生れてきたど。そして、 「瓜から生れたから、瓜姫子と名付けっぜぇ、じんつぁ」 て。そして瓜姫子と名付けて、めんごく育てて来たど。そして大きくなってから、機織りするようになったずも。そしてトントンカラリン、トンカラリンと機織れるようになって、じんつぁとばんちゃ、 「おらだ町さ行って、お前の好きなもの買って来てくれっから、おらだ留守のうちに、天邪鬼きたたて、決して戸あけんなよ」 て、そう言うて教えて行ったど。そうして瓜姫子はトントンカラリン、トンカラリンと織ってだど、そしたば、天邪鬼来たずも。そして、 「瓜姫子、瓜姫子、ええ空だから遊びに行かねか」 て、こういうたど。 「いいや、今日は機織れっていわっだから、出はんね」 て、こう言うたど。 「そんなこと言わねで、出てみろ、この戸、ちいと開けて呉んねぇか」 て、こういうど。 「じんつぁとばんちゃが開けんなて言わっだから、開けらんね」 「指の先だけでもええがら、出して呉んねぇか」 て、こう言うずもの。ほんでやさしい瓜姫子なもんだから、少し開けて呉っだど。そうすっど、ガラッと開けて入ってきてしまったど。そしてこんど、 「遊びにあえべ、あえべ」 て、聞かねずも、瓜姫子ば引張ってはぁ。そうして裏の桃の木の下のキンニョ(木を積んでおく所)さつれて行ったど、遊びに。そうしてその木の上さあがって遊んでいるうちに、 「瓜姫子、おれ、シラミとつてくれっから」 「頭さ、シラミなどいねぜ」 ても、言うげんども、聞かねで髪ほどいてしまったずも。そうしてその桃の木の枝さ、髪、ギイギイと巻いてしまってはぁ、瓜姫子のどこ下げてしまったずも。そしてはぁ、殺してしまったずも。そうして瓜姫子の着物みな剥がして自分が着てこんどは機織りしてたど。ほだども、あんばいよく織れねがったべども、織ってだど。じんつぁとばんちゃ帰って来たど。 「瓜姫子、天邪鬼こねがったか」 て、聞いだど。 「来ねがった」 「ほんだら、トコロも掘って来たから、トコロゆでて呉れっから、これから食うか」 そういうたど。そしてゆでて呉っだら、皮も剥かねで食うずもの。 「瓜姫子、皮剥いたり、毛むしったりして食うもんだぜ」 「毛は毛のくすり、皮は皮のくすり」 て、みな食ってしまう。そうしておかしいなとは思ってだども、こんど次の日になったば、向うの町から、 「瓜姫子はええ娘だちゅうから、嫁に呉っでけろ」 て来たど。じんつぁとばんちゃは呉っでやったど。そしてずっと行くど萱野さ行ったど。そうすっど小さい鳥とんできて、篭さくっついたど。 瓜姫子ののる篭に 天邪鬼は のりーた のりーた て、さえずる。天邪鬼は「シィシィ」と追うども、「瓜姫子ののる篭に、天邪鬼はのりーた、のりーた」ていうど。そうすっど、供の者も気付いてはぁ、 「この畜生、化けだか」 て、叩いて教えたど。そしてそこに萱林あったもんだから、そこ、天邪鬼の血で、それ染って、今でも萱の根は赤いと。むかしとーびん。 |
「集成 144 瓜子織姫」 |
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