14 蛙の法事むかしあったけど。一人ものの男がいたどこさ、あるとき、見かけのええ女、 「おれば、おかたにしてくんねぇか」 なて来てあったど。 「あんまりええぜ」 なて、そしてはぁ、一緒になったど。したらある日、 「おれ、親の法事だから、行って来っから」 て、こう言うずも。 「お法事だら、家さ何か持って行かねごで」 ていうたど。 「いや、何もいらね」 て、そう言うて行くずも。 「何だ、法事にいらねなて、おかしいもんだ」 と思って、後追かけて行って見たど。そしたらば、こんど何だか山の方さ行くずも。それからこんど、ずっと気付かねように追かけて行ったば、沼コあんなさ、チャポンと飛び込んでしまったど。そうして高いところから見ったば、こんどあっちからも来、こっちからも集まりして、蛙いっぱい集まってはぁ、真中に大きな蛙一人いで、ヂコヂコ、ヂコヂコと始まったごんだずもの。 「しゃ、何だべ、おれぁ、蛙ばおかたにしったんであったべが。一ついたずらして呉れんべ」 と思って、石拾って真中の大きな蛙の頭めがけて投げてやったずもの。そうすっど、あんばいよくぶっつかったずもの。頭さ。そうすっど一時にみな鳴き止んでしまったど。いや、親父、大(おお)気もみして家さ来て、知しゃねふりしったごったど。そしたら晩方、おかたはぁ、何だか面色も本当でなく帰って来たど。そして今度は、 「御法事はなじょであった」 て聞いたど。「今帰ってきた」て来たもんだから、 「いやいや、今日の御法事は大台なしであった。和尚さまの頭さ、石どっかから飛んできて、ぶっつかったもんだから、御法事は台なしであった」 「あの蛙、和尚さまか」 と、こう言うてしまったずも。そしたばこんど、 「いやいや、そういう風に、おれ、正体見破らっではいらんね。暇呉っでおぐやい」 てはぁ、出て行ってしまったど。むかしとーびん。 |
「集成 111 蛙女房」 |
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