6 古屋の漏るむかしあったけど。じんつぁとばんちゃいであったど。貧乏な家で、屋根もろくに葺かんねがったど。そしてある夜、二人で炉端であたっていたど。んだども、ええ馬コ生まれてあったど。そして飼って大事に育でっだど。それ、こんど馬喰は、 「あそこのトネッコ、行って売れて言うども売んねがら、盗んで呉れんべ」 て、こう思って、待ちかまえていたど。そしてこんど狼は、 「あれ、何とかして、このじんつぁとばんちゃ、食って呉っだいもんだ」 て、そう思って軒場さ来ていたど。そしたら、じんつぁとばんちゃと話には、 「なんて、世の中に恐っかないと言うたて、古屋の漏るど、米櫃の空(から)ほど恐っかないものないな」 て、二人で、こう言うたど。 「はて、狼も恐っかなくない、古屋の漏るなんていうもの、米櫃の空なんていうものは、どんな恐っかないもんだべ」 て思って、そう思っていたど。 「こんな恐っかないどこには居らんね」 て思って飛び出したど。そうすっと馬喰、トネッコ飛び出したと思って、狼さ縄かけて結(ゆ)つないでしまったど。とうとう狼は馬喰にとらっでしまったど。むかしとーびん。 |
「集成 33B 古屋の漏り」 |
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