23 五十騎町の猫明神

 そこの家は侍だったんだどな。
 ところで、猫を大事にする奥さんで、奥さんが便所さ行ったていうど、その猫 が従いて行ぐわけだ。そいつも一ぺんや二へんだれば誰も何も思わねげんども、 何年も何年もそういうような形なもんだから、旦那がちょっと不思議に思って、 そして猫も心すれば魔物だから、おかたに対して何かそういうような関係がある ということで、ある日、奥さんが便所に行ったとき、とたんに追っかけて行った ど。
 ところがその奥さんが出るまで、そこにちゃんとしているわけだ。して、
「こんちくしょう、何してんだべ」
 て憎くなってしまったもんだから、ぶった切ったというわけだ。ところがその 首は便所の裏板さ上がって、すばらしいドダン、バダンて音がしたていう。
 ところが、蛇の首さくっついて、そしてその蛇が落ちで来たど。
「そうであったか、そんでは、おれは殺すんでないがった」
 ていうことで、祀ったのが「猫明神」だど。今でもいっぱい猫がいて、子産(な)し たとき、殺すに殺さんねくて、そこさ納めて来っど、どこさか良縁が出るという もんだ。
(嵐田勝見)
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