14 狐退治

 前には、稲仕舞でも終(おえ)っじど、オタナサマの祭り、秋振舞などしったべ。
 あそこらの親父、秋振舞に招ばっで行って、そして一杯御馳走になって来たと ころが、中田(米沢市中田)の方から来っどこ、椚林などあって原っぱあった。 その原っぱで、小晩方ごろ、家のガガ、迎えに来たていうわけよ。そしてそのガ ガ、
「帰り遅いもんだから、迎えに来たから…」
 て言うたところが、御馳走になった親父言うには、
「なんだ、迎えになて、おれは何もわれになんど迎えになど来てもらわねったて、 ええ」
「いやいや、ほだげんども帰りは遅いし、酔えだりして、そこらで事あっじど、 悪れと思って、迎えに来たんだし、苞(つと)コなどおれ持って行んから」
 て言うもんだもよ。
「いや、苞コなどおれ持(たが)がれっから、何もわれになど持ってもらうことないし、 苞コなど、われんどこさやらんね」
 て言うたところが、ガガ言うには、
「なに、お父さん、異なこと語ってるもんだ。苞コ、おれさ持(たが)がせろ」
「いやいや、われなの持がせらんね」
 そして、
「われ先に立って行げ」
 て言うげんども、いつでもうしろさばりなりたがるというんだな。んだもんだ から、
「われぁ先に行けてば…」
 て言うげんども、
「ええがら、苞コ持がせろ」
 て、うしろさばりいる。そんで、
「われは狐だな」て言うたってよ。そしたら、
「何語ってんこんだ。狐だなて、おれ、おっかだぜ」
「いやいや、ほんね。ほんね。われは狐だ。化け方下手なんだ。ちゃんと、おれ の目から見っど、尻尾見えんぞ。ほだげんど、おれも犬なんだ。おれの尻尾は見 えっか」
 と、こういうたところが、狐は、
「おれは尻尾見つけらっじゃがな」
 と思ったというんだな。そんとき言ったそうだ。
「おれは、われと違って化け方は、犬だげんども、われのように尻尾見つけらっ じゃりするおれでないから、もしおれに化け方聞きたいと思ったら、何時(いつ)の何日(いつか)夜、 肥塚さ寝てる犬だから、聞きに来い」
 て言うたところが、ガガの姿が消えてなくなった。
「ああ、やっぱり狐だったな」
 て思って、約束した日に来たんだど。霜のふった朝に肥塚さ行ってみたら、狐 血まみれになって死んでだ。そこの犬に噛み殺さっでだど。
(斎藤捷太郎)
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