13 上杉さまと鴨とり

 稲刈りすぎてから、水張っておくじど、鴨だの水鳥だのが来て、そいつを殿さ ま獲ることを見たくて来たところが、そこに鴨取りの名人がいて、葭の生えっだ どこさ行くとき、殿さま、鴨とりの後追っついて行ったど。そしたところが、
「そっと来い、そっと来い」
 と言わっでくっついて行ったら、鴨取りが屁たっだど。殿さまの鼻先でよ。
「なんだ、この野郎」
 て言うたど。そしたら鴨取りは、
「そっと来い、そっと来い、鴨取っどこだから」
 て言わっだので、鴨取り屁たっじゃな、とがめる隙ないがったど。そして後で 鴨取りが言うたど。
  ばばとなぁ 床の中でも屁二つ
   殿の前で一つようよう
 て歌うたったところが、殿は、
「にさ(お前)、なかなか屁たれだげんども利巧なとこあっから、この際、とがめ ね」
 というたど。
(斎藤捷太郎)
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