4 いたちとねずみむかしあったど。いたちは河原さ畑作って、そうして粟蒔いたど。草刈ったり、草とったり、い ろいろ手入れをして、粟育てたど。そうして秋になったば、すばらしい立派な穂 が出て、そうして見事な粟畑になったど。 「いや、こんじゃ近いうちに、こりゃ、刈って呉んなねなぁ」 て思って、楽しみにして、ある時、刈ってもええと思って行ってみたれば、そ の粟一本もないごんだど。 「なえだこりゃ、おかしいごんだ、誰だ、こりゃ刈って行ったな」 て思って、そうして不思議で仕様ないもんだから、見っだれば、からすは止まっ ていたけど。からすに聞いだど。 からすどの からすどの 越前河原に 粟蒔いた キチキチ お前 取りやったか 取りやんねが キチキチ からすは、「おら知らねぇ、カァカァ」て行ってしまった。 「はて、こりゃ誰に聞いたらええんだか」て。雀はいた。 雀どの 雀どの 越前河原さ粟蒔いた キチキチ お前 取りやったか 取りやんねが キチキチ いたち聞いた。 「おら知しゃねなぁ、ちゅんちゅん」 て飛んで行ってしまった。 「はて、からすも雀も知しゃね」 ほうしているうちに、目の前さ、ねずみはチョロチョロと出はって来たど。粟 畑さよ。 ねずみどの ねずみどの 越前河原さ粟蒔いた キチキチ お前 取りやったか 取りやんねが キチキチ て聞いた。ほうしたら、ねずみも、 「おれぁ取んね、チュウチュウ」「ねずみも取んねが」て思って、不思議にしてい たところぁ、ねずみの子はチョロチョロと出はって来た。 「おかちゃん、ゆんべの粟餅、また食だい」 て言うたど。そうすっど、 「ほりゃ、ねずみだでそ」 いたちは、こんど、ねずみどこ捕えて皮むいて食ってしまった。それからねず み見っど、目の仇(かたき)にしていた。んだから、いたちはねずみば取って食うんだど。 とーびんと。 |
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