21 又右衛門の天昇り

 むかし、ある村に、又右ェ門というすこぶる従順な若い衆いだっけど。ほして旦那のいうことは、何でも聞いて、ほして、「又右ェ門、又右ェ門」て、みんなに可愛がらっでいたけど。
 あるとき、又右ェ門が、唐傘売って来いて()っだ。「はい」ていうわけで唐傘売り行ったれば、急に風吹いてきて、飛ばされそうになったもんだから、唐傘さ()ぐついているうち、みるみるうちはぁ、天まで吹き上げらっでしまった。
 ほして天まで吹き上げらっでしまったはぁ。ほして天さ行ったれば、倉なの建っていだっけ。ほこでやっぱり(へそ)の煮付御馳走になってはぁ、お空で暮しった。
 又右ェ門の村でも、毎年毎年、干魃でひどい目あった。ほして、又右ェ門の仕事は何だかていうど、ジョロで水撒き、雨降らせ方だった。
「おら方の村、いつでも干魃でひどいがったがら、おら方の村さ、余計降らせて呉っかなぁ」
 て、親切ごころに又右ェ門は毎日毎日、自分の村さ雨降らせっだ。
 ところがある日、臍の煮付け食うの忘せっだ。浮力がつかねぐったもんだから、地上さ、足、つっぱずして落っでしまった。落ちる落ちると、どさ行くべと思ったら、海ばたさジャボンと落っでしまった。ほうしたれば、何だか網みたいなさ引掛って、ほして陸さ上げらっだ。
「あっ、又右ェ門だ。又右ェ門だ」
 て、村の人だっけ。
「何だ、又右ェ門、お前、どさ行っていだんだ。唐傘売りに行ったけぁ、いねぐなったて聞いっだ。他の人の噂では天さ上ぼったべていう話もあったげんど」
 ほしたら、又右ェ門、話した。
「こういうわけで、おれぁ天さ行って、毎日雨降らせ方手伝わせらっだげんども、おら方の村、毎年干魃だから、おら方の村さ余計降らせて()んなねべと思って」
「お前か、毎日降らせたなて、おら方は毎日雨で、洪水ではぁ、田畑流さっで百姓さんねくて、漁師になったんだはぁ。まずまずお前帰ってきて、ええがったなぁ」
 ていうて、まず村さ帰って一緒になったけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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