12 (おも)(しゃ)い話

 むかしむかし、とっても話の好きな殿さまいだった。
 ところが、その殿さまもいろいろ行政面が思うように行かね。雨降って増水して、ほっつ流さっだ、ほら、風でどっちが飛ばさっだていうて、その年は仲々災害の多い年で、むっつりして笑わねぐなった。
 三太夫だ、家老だ心配して、
「誰か、面白い話語る人いねがな、面白い話語った者には、相当の褒美とらす」
 こういう触れを出した。ところがあるとき、若者が、
「んでは、面白い話、おれがする」
「間違いないか」
「間違いない。絶対間違いない面白い話だ」
「ほう、それでは城中に行って話してみろ」
 ていうわけで、呼ばて行った。ほして殿さまの前さ行って、
「あるところに、真白い犬がいだった。頭も真白、……」
「うん」
「耳も真白、鼻も真白、口も真白、背中も真白」
 殿さま、体のり出した。
「背中も真白か」
「背中も真白、腹も真白、手足も真白だ」
「手足も……うむ」
 最後に、
「うん、尾も白いか、アハハハ……」
 て笑った。
「んで、これで面白い話、おわりです」
「うん、なるほど尾も白い話だ」
 ていうわけで、殿さま大笑いした。ほしてすばらしく御褒美もらったけど。どんぴんからりん、すっからりん。
>>かみなが姫 目次へ