2 傘地蔵むかしあったけど。二人で住んでいて、お正月になるとも金はないし、笠縫ってその笠と茣蓙持って、小国の町さ背負って行って売って、その金で正月買いものして来たらええがんべって、じさま、ばさま相談の上に出かけて小国さ行く道中に地蔵さまいっぱい立ってやって、大雨降りなもんだから、笠もなく茣蓙もなしで、頭から丸濡れになってたどこ見て、 「いやいや、可哀そうだな、こがえなことして地蔵さまあまり可哀そうだから、まず正月何食っても過ごされんべから、茣蓙着せて、笠かぶせて、そして帰るべ」 て帰ってきたんだ。そしてばさまに語って聞かせたら、 「ええがった、ええがった。おらなど家さ入って、こうしているもの、たとえうまくないもの食ったたて、この寒さにこうしている地蔵さま、なんぼか喜んでいたべぁ、おらなど家に住まいしていんなだから、ええがった。ええがった。ええごとした、じじさま」 て、こうばさま、言うたちゅのよ。 そして夜そんな話して寝ていたれば、なんと、ヤヤァヤヤァと外で若衆の音ぁする。 ヤンゾウ屋形さ もうちいとだ ホレ がまんしろ ヤンゾウ屋形さ もうちいとだ かけ声でやって来たずなだ。 「おれぁ貧乏で正月ないものもひえねえど思って、若衆は馬鹿にして何をおら家さドダガダて持(たが)き込むやら」 て、寝てて想像しったって。そして人の音もしねぐなったし、「何いたずらして持って来て行ったもんだかわかんね。馬鹿にするにもほどがある」 みたいなこと語って、じさまとばさま起きてみたていうなだ。そしたら、お正月の酒から肴から、御馳走いっぱい持(たが)き込んで地蔵さまが恩返しに来たなだど。とーびん。 |
(高橋きみの) |
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