16 木蓮尊者

 木蓮という人がお母さん一人で育てたんだってな。そしてほれ、学校さ入るたて勉強させるのにお金もないげば、畠さ行っても、商い行くときも何商いだか行く途中、ササギなったな見っど、ササギ捩(も)いでみたり、何もかにも、ええぐないことして息子ちゃ続けたんだけど。そしてそのお釈迦さまの次ぎになるていうぐらい勉強させたんだど。そしてええあんばい年いって逝ぐなったんだべぁ。そしてこんど木蓮ていう人も勉強して勉強して、親逝くなってからも勉強して、お釈迦さまになるくらい神通力を持ったてよ。
「んだればこりゃ、これくらいなったれば、親のこと少し考えらんなねべな」
 ていうので、地獄と極楽見に行ったんだど。
「確かに極楽にいたはずだ」
 て行ってみたげんども居ねけてよ。
「んだれば、地獄の方行って見てみんべ」
 て行ってみたれば地獄の隅(すま)こにいて、御飯やっど火になったりして食んなくてよくよく骨と皮ばっかりみたいしていたなだど。
「ここでは親さすまね」
 て、お釈迦さまさお願いしたんだど。
「うちの母はおれに対しては、どのぐらい苦労して、おれこのぐらいまでなったんだげんども、今眺めてみっど、地獄の隅こにいた。極楽にやってもらうことできないか」
 て、お釈迦さまさお願いしたってよ。ところがお釈迦さま、
「んだればええがんべ。お盆の七月十三日にあらゆるお寺さまば招んで野菜でも果物でも赤飯でも、全部仏さまさお供えしていただけのお寺さまに供養してもらえば、かならず親ば極楽さ行くようにしてあげる」
 て、ほしてお盆の行事ていうのは、こういう風なことでするなだど。
(安部はる)
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