15 新宅振舞い

 どこでもここでも新しい家建てるの、大ばやりだ。
 ある人が相当立派な家を建てたていうわけだ。そして新宅振舞いに大勢の人招んで祝いごとしたていうわけよ。ところがそこさ一人の歌よみの先生がきて、
「何か先生、縁起のええどこ一つないかい」
 て頼んだけど。
「いやある。ほだげんど、おれ縁起のええどこ詠んで行きたいげんど、解釈ばり間違わねで書いてもらわんなね」
「いや、先生の詠むことだれば、間違いはなかんべ」
 て、誰も異議申さねことにしたんだど。
「いや、ほだればええっだ」  て、そして、
この家(やろ)ば、貧乏神がとりまいて
七福神の出る隙もなし
 て書いたど。
 貧乏の神のこと詠まっだげんど、ええのだか悪(わ)れのだか…。
(横尾権次郎)
>>カマイタチ 目次へ