23 化物寺むかし、おらえのあたりのようなところに、古い寺があったけど。そしてそこ に来る和尚さま、来る和尚さま、喉をみんな食いちぎられて殺されっこんだじも の。ある日、なんだか賢こそうな旅僧がその村に来て、その話をきいて、 「よし、そんではおれがその化物退治してやっから、おれどこをここのお寺の住 職にしてくろ」 なんていったど。年寄たちは、 「とても駄目だべから、やめろ」 ていうども、聞かないで、まずお寺さ泊めることにしたど。そしたら旅僧は大 きなフクデ餅一つ呉っでけろて言うたど。どこの家にあったが、やったじもの。 そして夜になって旅僧は火を焚いでそのフクデ餅をワタシに上げたら、「こんば んわ」なて言いながら、一人の和尚さん現わっだど。そして、 「おればも、当らせてくろ」 なんて入って来たど。そしてさまざまの話をしかげっじもの。しまいに、 「おれと術くらべしないが」 なんていうたど。旅僧は、 「ほんだな、おれも、ちっと知ってだが、まずお前からやってみろ」 ていったど。 「あんまりええ、そんではまず大入道になって見せっか」 なんて、身成りを一ゆすりすっど、六尺にもなったど。旅僧は、「ほほう、それ だけか」ていうど、「いや、まだまだだ」て、また一ゆすりで天井板まで届きそう になったど。そうすっど旅僧は上を見ないで、 「いや、これはおどろいた。だが大きくなら、おれもなれるが、小さくは、ちい とむずかしいもんだが、なれっか」 ていうたど。そうしたら、そんなことは造作ないなんて、こんどクランクラン と、とっくり返り、三尺ばかりになったど。旅僧は、「なんだそんなものか」てい うど、またクランクランとしたら、こんどは小さく小さく豆ぐらいになったど。 そうすっど旅僧はやにわに握んでフクデ餅の熱く焼けた中に押し込んだら、 キャーッて逃げて行ったど。そうこうしてるうちに夜が明けて、村の人たちぁ、 旅の和尚さま、生きっだか死んだかなんて、ガヤガヤ来たごんだど。そして和尚 さま、 「和尚さま、和尚さま、何ごともなかったが」 なんて聞いたら、コロコロ転んだと語りあれはきっとミコシイタチだと思う、 おれに熱いフクデ餅に入れられ、火傷しったべがら、なんだか裏の方さ行ったよ うだから、行ってみんべなんて、みんなで行ってみたら、やっぱり穴があり、そ の奥の方でウンウンうなってる声すんので、唐鍬なんか持ち寄って掘ってみたら、 やっぱり毛も白がかった古ミコシであったど。前の旅僧たちは大入道になったと き、見上げて喉を噛みつかれ、血を吸い取られて死に死にしたのであったべ。 この旅僧は村の衆にうやまわれて住職になって安態に暮したけど。むかしとー びん。 |
(川崎みさを) |
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