11 三枚のお札むかしあったけど。おらえの辺りのようなお寺の小僧だちいて、二人、裏の山さ、栗拾いに行ぐて 言 (ゆ) ったど。そしたば和尚さま、 「裏の山には山姥いるから、このお札呉っでやっから、追っかけらっだどき、投 げろよ」 て、三枚お札もらったけど。そうして二人で行って拾っていだど。そうしたば 晩方なるまで忘せではぁ、拾っていたずも。そうしていたば、何だか婆さま来た ずもの。 「にさだ(お前たち)、こんがえ晩方、帰らんねんだから、おら家 (え) さ入って、泊れ」 て、そう言うて呉れっど。そんな恐っかない婆でもなさそうに見えるもんだか ら、三人で行ったど。 そうして、飯 (まま) 御馳走になって寝るごどになったど。そして寝て、一人の小僧、 ひょいと婆さんのどこさ手やったば、もじゃもじゃていうずもの。 「さぁ、和尚さまに教えらっだなは、このごんだな」 と思ったど。ほうして隣のば突っついてはぁ、二人ではぁ、 「ばば、ばば、ばっこ出てきた」 て、こういうたど。 「ほだが、さぁ、ほだら逃げっど悪れがら、待て、紐結 (ゆ) つけてやっから」 て、そうしてはぁ、紐結つけらっだずも。ほして、便所さ入ったふりしてはぁ、 キンカクシさ、その紐結っつけだど。婆、 「まだだか」 ていうど、「まだだて言 (ゆ) うて呉ろよ」て、そう言って逃げだんだど。ほうして婆 さま、引っぱって、「まだだか」て言うど、「まだだ」て聞えっずも。ほなもんだ から、いだども、何度もしても同じ音すっから、起きて行ってみたど。そうした ば、キンカクシさ紐結つかっていたずもの。 「野郎べら、逃げたなぁ」 て、こんどは追っかけたど。ほうして逃げたは逃げたは、そのうちにはぁ、追っ かけづけられそうになったずもの。ほうすっど、 「火になれ」 て、お札一枚投げだど。ほうしたば、ぼうぼうと燃えたど。こんど婆さま、熱っ ちぇもんだから、しばらくそこ通れねでいるうちに、小僧たち、走って姿見えな ぐなっど消えたど。そうすっどまた婆さま、追っかけてきたずもの。こんどは仕 様ないから、 「山になれ」 て投げだど。大きな山になったずもの。それ、婆ぁは越いでは、また追っつか れそうになったど。こんどは、 「川になれ」 て投げて、ほうしてお寺さ、すたすたと駈け込んだど。したば和尚さま、シュ ミダンの下さ隠してくっだど。 そして、婆さま、廊下まで来て、 「和尚、小僧逃げ込んだべぁ、出せ」 なて、しゃなっど。和尚さま、知しゃねふりして、本尊さまにお経上げっだど。 したば、婆、そのお経に負けて逃げて行ったけど。むかしとーびん、びったりさ んすけ、かまのふた。 |
(川崎みさを) |
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