7 ねずみの金干し

 むかしあったけど。
 じさま、山さ木伐りに行ったど。そして昼飯持って行って、ええ空なもんだか ら、木の切株さ休んでいだど。そうしたばねずみ出はってきて、その木の下に孔 あんなで、その孔さ向って、「ええ空だぁ」て言うたけど。そうしたばいっぱいの ねずみ出て来てはぁ、蓆さ金干したど。ほしてしまいに、地蔵さま持ってきて、
「地蔵さま、地蔵さま、雨降ってきたら教えて呉ろ」
 そういうて、孔さ入って行ったど。じさまはぁ、こんどは昼飯食った弁当入れ て行ったジンキチ袋さ、ねずみ干して行った金、ゾロッと皆入れて、袋一つ、小 判干したな拾ってきたど。
 家さ来て、
「ばさ、ばさ、木伐りに行ったば、ねずみ、金干してはぁ、それ、おれ、袋さつ めてもって来た」
 て、見せっだど。隣のばさ、そしたら来たど。
「おやおや、お前 (み) だち、こらほどの金、なにしてもうけやった」
「おら家 (え) のじさ、山さ木伐りに行ってはぁ、木の切株さ休んでだば、ねずみ金干 して、それこさ持ってきた」
 と言 (ゆ) ったど。
「ほでは、おら家 (え) のじさも行 (や) んなね」
 なて、家さ行ったど。
「じさ、じさ、隣のじさなど、山さ行って、ねずみの干した金、いっぱい拾って 来たから、お前も行ってござれ」
 じさはぁ、行ったど。そうしてはぁ、木伐りもしねではぁ、ずるいじさなもん だから、ただ木の上さあがっていたど。そうしたら、ええ空なんだし、やっぱり ねずみ出てきて、「ええ空だ」て言 (ゆ) ったば、また、いっぱいのねずみ出て来てはぁ、 茣蓙 (ござ) などもってきてひろげて、金干して、しまいに地蔵さま、やっぱり持ってき て、
「地蔵さま、地蔵さま、雨降って来たら、教えておくやい」
 て、入って行ったど。じさ降りて行って、金拾うべと思ったども、小便出てき たど。降りてたれるもめんどうくさいもんだから、その木の根っこの上から、じゃ あじゃあ、じゃあじゃあとたっだど。
 そうすっど、地蔵さま、「雨降ってきた、雨降ってきた」ていうずも。と、ねず み出て来てはぁ、じさ、木から降ちねうちにはぁ、みな孔さしまってしまったど。 ほうしてはぁ、さっぱり拾わねで来たど。
 ずるいことて、するもんでないど。むかしとーびん。
(川崎みさを)
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