45 南の山の馬鹿聟

○ 馬の尻に札
 南の山に馬鹿な息子いだけげんども、旦那衆な家だけど。そして息子どこさ娘、 ええどこさなもんだから、呉っでやったべ。そうして嫁 (い) って、
「馬鹿だなて言うげんども、そがえでもない」
 どて、その娘の親はいだど。そしたればこんどその家さ、三ツ目に来てよ、
「お仏さま買ったの見せて呉ろ」
 て言わっだど。
「ええ立派なの買った」
 て言うけど。
「そがえに馬鹿でもない」
 て、家でいたど。そしたば板さ節穴あいっだったど。
「そさ、節穴一つあいっだげんども…」
 て言うたど。
「節穴あいっだげんどもな、そこさお十三仏でも掛けておけば、見えねえから、 ええでそ」
 て言うけど。息子がよ。
「あら、こげなこと本当のことなぁ、馬鹿であんまえちゃえ」
 どて喜んでいたど。そして、
「馬も飼ったから見て呉ろ」
 て言うたど。そしたば、
「ええ馬だ」
 なて見っだけど。そしてこんどはずうっと撫でて、尻の穴見つけだずも。
「ああ、ここさもお十三仏掛けておくどええ」
 て言うたずも。そうすっど馬鹿現われだずも。
「いやいや、馬鹿だじゅうこと本当だな。馬の尻さお十三仏かけておけなて…」
 ていたど。
(大平・渡部もよ)
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