37 食わず女房

 欲ふかな親父、一人身な親父いて、「飯 (まま) 食ねオカタ欲しい」て。そうすっど飯の 食ねオカタもらったけど。そうだげんども、山さ行って来っど、米ぁ減ってなく なる。なしてこがえに飯も食ねオカタなて、米減んべと思って、親父ぁ梁の上さ 隠っで、山さ行ったふりして見っだど。そして親父は出はって行くじど、大釜鍋 さ飯炊いていたもんだど。そして飯炊いで、ヤキミシいっぱいにぎって、髪ほど いて頭の真中さ大穴あいっだもんだ。そこさストンストンとヤキミシ入っでやる がったど。
 そんで親父見っだもんだから、ババ分かってで、
「その親父、降 (お) っで来い」
 て、そして降っで来たら、
「この桶さ入れ」
 て言わっで、大桶さ入ったていうたな。そのババ、桶背負って山さでも、ガラ ガラと走る。そうすっど桶の中でよく神さまさ手合せたど。そうすっど天井から 白い褌みたいなもの下がってきたど。それさ伝わってあがって逃げた、そいつ知 しゃねで、ババ先さ行ってしまった。そして食うべと思って見たらば、桶が空 (から) こ だど。戻って来て、親父は逃げてきて、大菖蒲と大ヨモギの中さ隠っだ。化けも のは菖蒲とヨモギの嫌いな化物で、
「出はってこい、出はってこい」
 て、そのぐるりで待ちかまえていっけんど、親父出はって来ないから、ババ行っ てしまったど。んだから欲ふかいことしねんだど。とーびんと。
(新沼・土屋ひろえ)
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