36 ムジナむかし三平という人ぁ、木地山さ行ってだど。そしてそこさ行ったれば、一人泊って カケゴ掛けっだど。さぶしがりだったべな。そこんどこさ女人、きれいに髪結っ て、「三平どの」て、カケゴ越しに、ヒィて笑うごんだど。そうすっど、さぶしく て、燃えしゃり投げてやったど。そうすっどまた逃げて行って、またちいともよ うど、「三平どの」て来て、カケゴあけて見っこんだど。そうすっじど、また燃え しゃり投げてやって、そんでもまた来たけど。そうすっど木伐りに行っていたの だべ、こんどは燃えしゃりもなくなるもんだから、そこにある斧 (まさかり) 、ぐいっとぶ ん投げてやったど。そしたればそれから来ねっけど。「来ない、ほんじゃ逃げて行ったべ」 ていたど。そして一晩ねぶんねでしまったべ。そして朝げに目覚まして、こん ど表みたば、血たらした跡あっけど。 「これ、血たらした、斧ぶっつかったんだか、血たらした跡ある」 て、ずいっと後追っかけて見たど。そしたれば大ムジナ、小屋から僅か裏さ行っ て死んでだけど。とーびんと。 |
(大平・渡部もよ) |
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