22 狐女房安部の保名が葛の葉というオカタ持っていたの死なっで、山の神さおこもり しったれば、追わっで、そこさ狐来て、そいつを隠して呉て、「ここさ狐来たはずだ」 て言うたげんども、袂さ隠して助けらっじゃど。そしてもどってから、葛の葉 と同じになって化けて来て、そこさもらわっじゃなだけな。もらわっでいるとき 子ども出そうになって、そして男の子出て、童寿丸と名付けたど。そして三つに なって遊ぶくらいになったれば、春さなって日当りええぐなったれば、その軒 (こま) 屋 の上さ陽なたぼっこして、狐寝っだけど。そうすっどオボコは、 「ワワいだ、恐っかない。ワワいだ、恐っかない」 て泣いて来たけど。そしたれば化けて親になって来て、「何居たっけ」「ワワ居 だっけ、恐っかない」て言うもんだから、書き置きしてはぁ、信太の森の狐だ、 助けらっじゃ恩返しに来たなだげんど、正体、子どもに見付けらっじゃから、こ れで子ども残して行 (い) んからって、書き置きして行ったどこだけどな。そうすっじ ど、ちっちゃこい三つのオボコだから、信太の森さ、恋しくて、「恋しくば尋ね来 てみろ」と書かっていたので、安部保名は子ども背負って行って、寒い谷底なが めて春の陽ざしのええとき、里の方温かいげんども、沢中の方は雪あるずも。風 寒い時だずも。そして行って、「葛の葉、葛の葉」て呼ばっけんども、風の音ばり でさっぱり音しねごんだど。そうすっじどオボコ背負 (ぶ) って寒い風のとこにあっち さ行ったり、こっちさ行ったり呼ばったれば、やせた狐ぁ上 (かみ) から来たどこだけど。 そうしてクルクルと廻って葛の葉になって、そして乳をオボコさたくさん飲ませて、 「これで恩返したから…」 て言うて、宝生の玉と烏の聴耳という宝物呉っじゃど。そいつ耳さ当てっじど 烏の鳴く音みなわかるし、宝生の玉は何彼に当てられる玉だったど。そして烏何 て鳴くか聞こえっから…と。 「そいつ、おがったら、あずけて呉ろ」 て、もらって別っだど。んだげんど、 「かぁちゃん、かぁちゃん」 て泣くもんだから、狐になって、オボコさ、カァカァと向ったど。そしたば、 「ワワ、恐かない。ワワ恐かない」 て。そして父ちゃんさ背負 (ぶ) さって来たけど。 そいつがおがって、こんど占いになって、殿さまがひどい病気になった時、占っ て直して呉っじゃど。烏の聴耳で聞いて、宝生の玉で治して呉だど。そして日本 一の占いになって治して呉たんだど。とーびんと。 |
(大平・渡部もよ) |
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