21 狐女房ある山でよ、炭焚き親父どこさ、狩人来て、狐追って寄こしたど。そうすっど、 炭焚き親父どこさ飛び込んできたのよ。その狐がそうすっどその親父が可哀そう だちゅうわけで隠して助けてやったんだど。そのうちに狩人、「入って来ねがったか」 て言うど、 「入って来ねがった」 て、こういうわけで隠して、狩人の去った後で狐帰してやったど。そうすっど その狐が何も恩返すことなくて、その親父が一人身であったそうだ。 ある夕方、ダダになって、 「峠越えるんだげんども、道迷って行かんねから、一晩泊めて呉ろ」 て、そういうわけで来て、親父どこさ泊めてもらい申して、オカタいなくて、 一人身なもんだから、さまざま夜話した結果、オカタになったんだごで。そうし て子どもも出そうになって、一人持ったのが童寿丸だったど。 あるとき、母親と二人で、親父ぁ稼ぎに行ったとき、昼休 (やす) びしったとき、母親 も何知らずねぶってしまったから、元の体になって、狐尻尾出していたのだど。 オボコ目覚まして見て、 「恐っかない、ワワコ、恐っかない」 て泣くど。そうすっど自分の体現われたから、ある時、子ども騙して寝せて、 そして書き置きを結 (ゆ) つけて山さ去ったもんだ。子ども泣くときに、 「尋ね来てみろ、信太が森の葛の葉に」 て三度呼ばれ、と書き置きして行ったんだど。 親父、カマから帰ってみっど、オボコは、「恐っかね、恐っかね」て泣いていた ど。 「何して、こんな暗いシマにして泣いている」 て、家さ寄って来て、火焚くべと思ったば、鍵さそういうわけだど。 「こういうわけで助けらっだ御恩に、おれぁお前の子孫作りに、お前のオカタに なったんだから」 て、そして子どもと昼休 (やす) びしったときに、正体現わしたから居らんねから、子 ども泣くときは、こさ来てみろて書いてだんだど。 子ども泣くから、子ども背負って信太が森の葛の葉さ行ったんだど。そしてそ の峯さ行って、「信太が森の狐」て呼ばっけんども、そんでも音しねわけだど。上 にあがれば風の音、下にさがれば水の音、そんで何度呼ばっても居ないし、殺す より他ないべと思って、自分がその子背負って食って行かんねど思って、そして 途中で親父は殺すとしたれば、道の脇でカサカサていうたど。そしてちゃんと「殺 さねで呉ろ」て、おかたになって出てきた。別れっどきに、宝生の玉というのを 子どもさ呉っじゃのが、宝生の玉で世界一のサンオキになったど。安部のセイメ イというのだど。そして別れに、クランクランと、よくよくのやせ狐だから、決 しておっかて言わんねぞ、そして泣くときには、その宝生の玉舐 (な) めらせっど黙る し、こうすっど眠ぶるし、て教えらっで来たど。そしてその宝生の玉で烏啼くべぁ、 鳥啼くべぁ、聞くじど何が出ると分かっど。それでサンオキになったど。 あるとき、殿さまが病気に喰付かっで、死に生きすっどき、なじょな医者さ掛 けても治んねとき、そのサンオキにおいてもらったど。そうすっど家来の家に、 蛇とナメクジと蛙、生き埋めしったな、その憑りで殿さまが病気に喰付がっだん だど。そいつサンオキで分かって、日本一のサンオキになったど。とーびんと。 |
(新沼・土屋ひろえ) |
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