１９　クェンクェンコむかし

　じんつぁとばんさいたっけど。川さ洗濯に行ったら、小箱流っで来たど。
「赤い小箱こっちゃ来い、黒い小箱そっちゃ行げ」
　て、ばばが赤い小箱拾って来たど。そうすっど赤い小箱持 (たが) って家さ来て、
「こがえなの、ばば何だ」
　て言うたら、「赤い小箱拾って来たどこだ」て喜んで開けてみたら、ちっちゃな 犬こが入っていたっけど。そいつ育てて、そしてその畑さ行って、ここ掘れ、こ こ掘れて言うから掘ったところが、ザクザクと大判小判が出て来たど。そいつひ ろげっだどこさ、隣のじじとばばが来て、
「これ、どっから取って来た」
　て言うど、
「これ、こういうわけで、犬こが掘れて言うので掘ったら、出たから干しったど こだ」
　そうすっど、その犬貸せ貸せて。貸さね貸さねて言うのを、ビリビリ借りて行っ て、掘れとも言わねの掘ったど。ところで牛のビタ糞、ビタカタと出てきたもん だから、「こつけな犬、山さ行って殺した」
　て、持って来たど。そんでむごさいと言うて、松の木植えて来たど。そうすっ ど松の木がグングンと大きくなって、その松の木でスルスを拵ったど。そして、
　　　松の木のコンズルス
　　　よう噛んだ　よう噛んだ
　て挽いたら、そのぐるりさ大判小判がざらざら、ざらざら落っだど。そうすっ どまたじじとばば喜んで干しったど。そこさまた隣の悪者じじとばばが来たど。 そしてスルスも貸さんね貸さんねて言うのを、ビリビリ持って行って挽いたとこ ろが、やっぱりビタビタと牛の糞のようなものが出たから、こんなものって、ぶっ こわして焚いだど。そして竈の中さ焚いだので、「なえだ」というたら、「こっげ なもの焚いてしまった」て言うたど。そうすっどじじとばば、いたましいもんだ から灰を集めてきて、袋さ入っで枯木さ上がっていたどこさ殿さまが通りかかっ て、
「何しった」
「おれぁ、枯木さ花咲かせてみんべと思って、上がっていた」
どかて…。「咲かせてみろ」
　　　アヤチュウチュウ
　　　コガネサラサラ
　　　チチンプンプン　パラリン
　とやったど。そうすっどきれいな花が見てる間に咲いたもんだから、御褒美を もらって来て、置いっだどこ、そこさまた隣のじじとばば来たわけだ。そうすっ ど残り灰持って行って、待っていたど。
「ああ、またいたな。お前は何だ」
「この枯木さ花咲かせてみんべと思ってだ」
　ところで、また、「アヤチュウチュウ、コガネサラサラ、チチンプンプンパラ リン」て撒いたところが、花さっぱり咲かねで、殿さまの目さ灰が入ったど。 「こんなやましいもの、あったもんでない」
　て、殿さまの下役にせめらっじゃど。とーびんのと。
（新沼・渡部勝美）
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