11 猿聟

 三人娘もってあったっけど。じっちゃ田の水見に行ったれば、猿来たけど。煙 草喫 (の) んでたど。そうすっど「じっちゃ、どさ行ぐ」なて言うたて。
「おれ、田の水かけてくる」て。「おれぁあんまりこわいから」なて言うたべちゃ。 そうすっど、
「おれ、かけてくれる。じっちゃ娘持ったが」
「娘三人持ってだ。どれでもええから一人呉れる」
 て言うたもんだも。
「いや、これぁ言うてみたものの、田の水見てくるんだか」
 ていたところが、ヒタヒタヒタと、じっちゃの田さ、みな水かけてくれたど。
「いや、これはおえないことしたもんだ。娘呉れるて言うたものの、家さ行って、 なじょなこと語ったらええもんだか」
 て来たったじだな。
「おれ、田の水見に行ったげんども、猿来たけぁ、おれ田見て呉っから、娘一人 呉ろって言うけぁ、誰か一人行って呉らんねが」
 て言うたべちゃえ、
「そつけな猿のおかたになっていらんね」
 なて言うけど。
「いや、こんなこと語んねで、猿ぁ来っから明日行って呉ろ」
 て、こういうわけであったど。その娘も賢こがったごで。
「よしきた、親孝行だ、おれ」て言うわけで、一番末子の娘、「おれ行ぐ。じっちゃ」 て、そういうわけであったど。
「かつけなおかたになっていらんねがら、何か細工して呉らんなね」
 て、細工したごで、その娘はよ。そうして明日節句だ、餅背負って行かんなね。 そうすっど、「よく来た、餅搗いて背負って行かんなね」て、猿ぁ臼出して餅搗き 始めたど。そしてトリ餅すっどこだっけど。
「いや、取んな。取っど粉くさいって食ねも」
 こういうわけだ。そうすっど、
「ほんじゃ、なじょして持って行ったらええ」
「臼がらみ背負って行かんなね」
 こういうわけだど。そうすっじど、猿が臼がらみ背負ったど。娘は猿子出っだっ たど。あんまり美しい花があったもんだから、背中の猿子の尻、ガリガリとかっ ちゃいだど。そうすっど猿子は泣いだど。
「なして、そがえに泣く」
 て言うけど。
「あの花欲しいて言うでソ」
 そうすっじど、その猿は、「おれ行って取ってくる」ていうわけで、臼降ろしそ うになったど。「臼おろすど、土くさいていうから、背負って行かんなね」  そんで臼背負って、崖さ上がっど思うと落っで川さぶんぶんと流っでしまった ど。
「おれ、一番親孝行した」
 て来たけど。そして猿の子放してやって、親孝行したっていうことだど。とー びんのと。
(高畑・斉藤きち)
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