27 いじわる和尚

 むかしむかし、けちなお寺いだったって。どさ行っても威張りこがしてばりいて、人ば三分にこき降ろして、自分ばり七分で人ば困らせて喜んでいるお寺いだったど。村中から、まず鼻つまみ者だった。
 で、ある日、ある大きい旦那さ招ばっで行った。ほこでは餅で()んだ。
「んだらば、こりゃ安心して、大きい(つら)して()うえ」
 て、まずはぁ、つうと(少し)昼間(食)抜いたぐらいにして、夜に餅さ招ばっで行った。ところが、ほこの旦那聞いた。
「うん、御円寿さま、御円寿さま、まず、お寺さまざぁ、食ねもの何々あるもんだっす。おらだ素人で、こりゃ、さっぱす分からねっだ。はいつ教えてもらわんなね」
「いやいや、四足、二足食ね」
「ほれから、後、ないもんだがっす」
「後は、まず、魚類も生臭も駄目だ。餅や野菜類は、これはさしつかえない」
 ほして、みんな席さ着いて、ほの和尚も席さついた。和尚が箸とったれば、ほこの旦那、「待った」かけた。他の人は、
「いや、うまい餅だ、こっちはうまい小豆餅、うまい納豆餅」
 て、食った。(せん)には小豆餅とちょうちん餅は先、て言うて、小豆餅一等最初食うのが常法だ。その次はたいがいクルミ餅とか、小豆餅の次は色餅だ。ほれから一番最後は塩っぱい納豆餅だった。納豆餅最初から食うなていう人は助平だなて()っで、あんまり歓迎さんねがったわけだ。
 ところが、小豆餅食うべと思ったら「待った」食った。
「和尚さま、ちょっと待ってけらっしゃい」
「何だ」
「あなたは、四足・二足は食ねて言うたな」
「いやいや、四足・二足は食ね。これは四足・二足ではあるまい」
「いや、ほでない。中の餅は四足だ」
「なして…」
「熊餅だ、熊ざぁ四足だ」
「はぁ、ほうか、熊餅か、うん、んではうまくないなぁ」
「ほして、また、つけたのはウズラ豆て言うて、これはウズラだから二足だ」
「はぁ」
 て、ほして、みんなうまいうまいて言うて食うとき、腹減ってぐうぐう喉鳴っけんど、四足二足食ねて言うたもんだから、ほの餅何としても、お寺食うわけにいかないし、みんな食うな眺めて帰って行ったった。ほしてほれから、あんまり檀家の人とか、村さいじわるしねぐなったど。どんぴんからりん、すっからりん。
>>へらへら話 目次へ