23 役人と頓智小僧むかしむかし、江戸の番所の前で、小僧っこはなりまた(どなった)。「いやいや、ぶっ魂消た。いや、とんなこともあるもんだ。馬と豚の子生んだ。いや、馬、豚の子生んだ。隣村のどこそこで、馬、豚の子生んだ」 はいつ聞いっだ役人と物見高い江戸の住民が、ほの部落さ、どんどん走って行った。ほしたけぁ、なんぼ行っても馬、豚の子生んでるわけない。どこ探してもそだなことない。ほして、 「あの野郎、ほに、嘘こきあがって、とんでもない野郎だ」 て言うわけで、役人が走って来た。 「こらこら」 て、押えらっでしまった。 「何だ、馬、豚の子生んだなて、とんでもないこと言うもんだ。馬、豚の子生んだなて、ほだなこと今までないべな」 「お役人さま、誰か馬、豚の子生んだなて言うたがず」 「お前言うたでないか」 「いやいや、とんでもない、おれぁ馬が豚の子ば、踏んだて言うたんだ」 「うん、踏んだ、踏んだはあり得る話だ。これは仕方ないな」 「とにかく、お役人さま、ほういうことで駄目だ、あなただ勉強不十分だ。いつの世の中に馬が豚の子なの、生むことあるんだ。おれぁ言うたの、さっきから、太郎兵衛さんの馬が、次郎兵衛さんの豚の子踏んだて騒いでいんだて話したんだ。弁償しろの、何だのて言うけがらよ」 「ほうか、あり得る話だな、仕方ない」 「勉強不足では分んねっだな。おれ課題出すの、当ててみろ」 「うん、大きいほら叩くな、んだら、お前言うてみろ」 「馬が東の方向いたら、尻尾どっちだ」 「それぁ、西の方に決まっていんべちゃ」 「ほだから、駄目だ。よくこだな役人に使っているな」 「馬、東向いたら、尻尾西にきまっていんべな」 「いやいや、ほうでない。ええか、お役人さま、馬なのどっち向いだって、尻尾は下しか向いていねなだ」「こんちくしょう」 て言うわけで、とうとう役人がさんざん小僧にからかわっだど。どんぴんからりん、すっからりん。 |
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