22 赤馬と黒牛むかしむかし、薬売りの商人が、ずうっと行商して歩った。ほしてこれから峠にさしかかっどこに、店しった木賃宿があった。ほこさ泊まって、ぶっ魂消た。シラミとノミと、もさもさ居た。何とも仕様ない。夜、掻 「ばんちゃ、ばんちゃ。なしてここにこだえ高いもの、ただ、こだえして置くのだ」 「何だっす、お客さん」 「いや、ほかでもないげんども、ここに赤いなと、薄黒いなと居た。これは赤馬と黒牛て、おら方 「何だ」 「こりゃ、こいつだ」 「はいつぁ、ノミとシラミだべ、お客さま」 「いや、そうとも言うか知 「あらら、高く売れるか」 「おれぁ、世話して呉 「はいはい、ほんでは間違いなく捕 て言うて、ずうっと行商して帰って来て、またほこさ泊った。 こんどは、ばんちゃ、せっせと捕 「あの、お客さま、なんぼで世話してもらわれんべ」 ノミとシラミ、いやというほど持って来た。 「ああ、ばんちゃ、言うな忘 「はぁ、ほうか、おれぁ爪でつぶしてしまったまなぁ」 て言うて、その商人がさっぱりかゆくなく、ゆうゆうと泊ることできたけど。どんぴんからりん、すっからりん。 |
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