18 殿さまとあくびむかしむかし、あるところに、とっても短気な殿さまいたんだけど。ほして、「お茶をたもれ」 なて、そのお茶遅いど、そのお茶盆を蹴返すやら、吹っとばすやら、何だかだない。まず大した短気だ。 「お湯わかせ」 「もう少しでござりまする」 「もう少しなて…」 て言うてはぁ、水のうちから入って、「これ、三太夫、冷めたいでないか」なて言うくらい短気な殿さまであった。 ある日、奥方がちょっとした気のゆるみから、あくび半分出かかった。「無礼者!」て言うど、 「余 て言うわけで、南の方の島さ島流ししてしまった。そして島流しされっ時、その奥方が懐妊してだ。ほして漁師の家でそのおぼこ産 ところが、その子どもは奥方に似てきれいだ。段々 「お前のおっつぁんが居ねでないか、お前は父 て、いじめられる。奥方も何とも仕様なくて、お父さんの殿さまの話語って聞かせた、娘さ。「ほうか」て、娘もすでに十才にもなったもんだから、聞き分けて、 「んだらば、おれ、今からお父さんと会ってくる」 「ほだごと言うたて、向うはお殿さま、傍さも寄りつかんね。門前払い食うぐらいがオチなもんだから、行かねでおれどここで暮せはぁ」 て、奥方言うた。んだげんども行ってみたい。その離れ小島から本土までの便がなかなかなくて、ようやっとのせてもらった。その、のせてもらうときに、白椿の木一本持 「金の花咲く木はいらんかね。金の花咲く木買ってけらっしゃい」 て、触れて歩った。ところがはいつが、その殿さまの耳さ入った。 「金の花咲く木だらば、余 て言うわけで、城中さ呼ばって行った。ほして、 「これ、娘。白い花の椿の木、本当に金の花咲くか」 「はい、左様 「わしが買う」 「んだげんども、お殿さま、一つだけ条件がある」 「何だ」 「この木植える人が、決してあくびしてなんね」 「何だ、あくびしてなんねなて、人間つぁ、あくびなの常に出るもんだも、あくびしてなんねなて言うことはあるもんでないべな」 その間髪を入れず、その娘は、 「いや、実は何年前に、あくびしたばっかりに、わたしの母親が島流しさっで、現在もその島に、わび暮ししてる。わび住いしてる。その、おれは娘だ。何をかくそう、あなたの娘だ」 見れば見るほど、むかしの母親の若いときのそっくりで、そろそろきれいさの頭角現わしてくる頃だった。はいつ、しげしげと見っだ殿さま、 「いや、おれ悪れがった。お前のお母さんば、そんな辺鄙などこさ流したりして、ほして妊娠しったのば、ほだんどこさ流してやって、おれ悪れがった」ていうわけで、その娘さ詫びて、すぐさま奥方を呼び寄せて、ほれから三人仲よく暮したど。それが結局、金の花咲く木だった。どんぴんからりん、すっからりん。 |
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