6 天気占いむかしむかし、上の山の城下で、殿さまがずうっと昔は、天気なて関係ないがったげんども、鉄砲あるいは煙硝なて、火薬なて使うようになって、百姓以外に侍も天気予報が必要になって来た。ほんで殿さまがお触れを出した。「天気に対して自信のある者は、明日、明後日申し出ろ。うまく当った者には、智恵相応のお礼をする。まず、十日の人足赦免だ」 こういうわけで、いろいろ集まったのは、百姓、これはまずいろいろ天候相手に仕事してんのだから、大博突 まず第一番に、 『お月さま笠掛かっど、次の日かその次の日、雨だはぁ』 「よし、この書記がひかえる」 『それから、朝焼け、朝てっかりは聟泣かせて言うぐらいだから、これは雨だった』 『夕焼け真赤なときは、明日天気がええ』 『毎日、城中で鳴らす太鼓の音、ドンドン、ドンドンてええ塩梅に鳴っど、これは天気。バララ、バララなて、おかしげな音立でっど、これは雨』 『ケラツツキ(キツツキ)がカラカラーと音やって、リレーのようにこっちの山からあっちの山から、また向うの山さ鳴り響くときが、これは空悪れくて、うす頭痛いて、頭、木さぶっつけんなだど。なて言うて、これも雨』 『山鳴りすっ時、ごうごうて。これは天気が変る』 「ようし」 また、それも書いた。ほれから、 『夜空が、星がうんときれいで、しかもピカピカて、いつもより輝いた時、これは次の日は風だ。ものすごい風が吹く』 『トンビが低く舞うとき、これは雨。あるいは低く高く、低く高く安定しないときは、嵐の前兆だ』 「よし」 『それから、雷様。東の方で鳴っどきは、なんぼ大きい音でも、東かみなり様雨持たずて言うて、決して雨降らね。その日は安心してでええ』 『猫が布団の脇あたりにいて、布団さ顔埋めて、下向きになっていっどきには、これは雨だ』 『クモが巣かけて下向きになっていっどきは雨、上向きになっていっどきは天気』 「よし」 『たまたま、今度、石ごろ辺りさ大きな青大将がにゅるにゅるって出っ時には雨だ』 『川原の霧がのぼっ時は雨が上らない。ずうっと下りの方さ流っで行く時は晴の天気だ』 「うん」 『ほれから、どこの村にも頭のテコヘンな、そいつが上り下り、何か分からねこと言って跳ね廻って歩くときは、こいつは必ず雨だ』 『小虫がテンマリになったり、離っだり、どんどん飛び交うとき、これも雨』 『蛙 『まぁ、雨降ってるが、途中からミンミン蝉が急に泣き出した時、これは晴れる前兆だ』 こういう風にずうっと言うて行って、それを提案した人が、みんな十日間人足赦免、あるいはそのうち、うんと当った人が十五日間赦免だった。ところが今まで言うたうち、十分て言うわけには行かなかった。いろいろなことで当りはずれがあった。 で、殿さまは晴れの時には、煙硝はたきて言うて、火薬はたきすんなね。いろいろ混ぜものあったそうだ。楠の木、麻の木、炭にして混ぜる。セン屑て言うて、鉄削ったのを混ぜる。あるいはその当時は黒色薬なて、黒い火薬、そういうものをみな、叩 ところがある男の人が黙って居っけんども、 「お役人さま、お役人さま、今日の昼間から雨」 ものすごい曇った日でも、 「ああ、今日の何 これもまた十分当った。ほんでその人が五十石の禄高頂戴して、お天気の相談役になった。ほして、「今日は、天気は何 ところがその便所 |
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