烏帽子沼

 蛇は片貝の身を食うのが上手で、貝が開いていっどぎに、ねらって身を食う がったど。
 ところが、蛇が身をねらって頸を突込んだとたんに、パチンと蓋 (ふた) してしまっ たど。片貝から頭はさまっだ蛇は、苦しまぎれに片貝つけたまんま、白鷹山越 えで、向うさ行ったど。
 その蛇見た虚空蔵山参詣の人が、「ああ、烏帽子つけた蛇が沼さいた」て云 うてその沼を「烏帽子沼」と云うようになったど。

伝説
   鎌倉権五郎の投げ石
 源義家の家来、鎌倉の権五郎が頭度山 (とうどのやま) から左手で大石をなげたので、今も松川 の石には権五郎の手の跡がのこっている。あまり行かなかったので、こんどは右 手でなげたら、白鷹山を越えて、礫石まで行ったという。
  黒滝神社縁起
 元禄の頃西村久左衛門が黒滝の開鑿をやったとき、佐野原の剣崎不動の剣が落 ちて、川に住む大蛇の体にささり、蛇の胴が三つに切れてしまったという。
(安久津久造)
>>蛇むこむかし 目次へ