ここらあたりは屁くさいむかし、村芝居があったど。 なんばこ気ィきかない、ズガばっかりある馬鹿みたいな男が、役者にはまった ど。ほんで何したらええがわかんねもんだから、大江山の酒呑童子になれって云 わっだど。 「こいつぁ、鬼には、馬鹿面 (づら) してるし、ズガもあっからええべ。語りようも何も さっぱりわかんねもんだし」 鉄の棒のすばらしく太っといのを持って、紙に書いた「ここらあたりは人くさ い」ていうのを、読むだけだったど。 舞台さ出で、その字を読むと思ったら「人」という字の上の方を手でおさえで 読んだもんだから、 「ここらあたりはへくさい」て言うたど。んだから、わかんねもんは何させでも わかんねもんだど。 |
(貝生 工藤六兵衛) |
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