神ない話

 ヤロコべらぁ道の傍さ小便たれだり、川さしったどころが、そこさ村の和尚さ まが通りかがって、
「道や川さ、小便たれんな、川の下の方さ使い水しているなだから、決して小便 などたれでわるい」て云うたど。ヤロコべらは、
「ほんじゃ、どこさたれっこど」て、和尚さまさ聞いたところが、和尚さまは、
「川には川の神さま、山には山の神さま、道には道の神さま、田には田の神さま ざぁあっから、神さまのいないどこさたれろ」て和尚さまが教えるもんだから、
ヤロコべらは、わらわらと木の上さ登って行って、和尚さまの頭さ、チイチイと 小便たっだど。
 そしたれば和尚さまは、ごしゃえで、
「こら、オレの頭さ小便ひっかけるな、誰だ」て云うたどころが、
「和尚さま、和尚さまはカミのないところさたれろて云うから、和尚さまの頭に は、さっぱり髪がないから、たっだんだ」て云うたど。
(貝生 工藤六兵衛)
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