狸の化物

 むかし、お稲荷さまあたりに、夜になっど年寄りばさまぁ、糸車廻していっかっ たど。そしてローソク一本ちゃんと点 (つ) けでいっかったど。
 そういう化物出るもんだから、組寄合して、狩人 (かりうど) 一人、組の中さいっかったの で聞いてみっど、
「ああいう化物つうのは、灯 (あか) しとか、化物の眼 (まなぐ) が化物の正体なもんだから、さい つをねらって鉄砲ぶってやれば、一発でとめられる」て狩人が云うたど。
 嘘だか本当だか知らねげんども、その狩人が頼まっで、一つ玉、うーんと大き くこしゃえてもらて出掛けて行ったど。
 お稲荷さまどこまで行ぐど、年寄ばさまぁまた糸車、ぐうぐうぐうて、ローソ クつけて廻しったど。狩人はそのローソクをねらって、鉄砲をぶってやったとこ ろが、一発でローソクはパッと消えてしまったど。
 次の朝げ明るくなるのばっかり待ってで行ってみたれば、狸一匹だったど。そ の狸獲って来て、みんなで狸汁して食ったど。ああいう化物いいもんだ。トービ ント。
(貝生 工藤六兵衛)
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