あずめのからめ

 むかし、村に男の兄弟がいたっけど。おばんちゃんは珍らしい〈あずめのから め〉ていう果物がうんと好きで、兄弟さ、その〈あずめのからめ〉採ってくれる ように頼んだど。んだげんども、〈あずめのからめ〉のあるところには、鬼がいっ かったど。だからなかなか恐 (おっ) かなくて行かんね。
 兄がおばんちゃんに何とか食せっだくて、採りに行ったど。大きな〈あずめの からめ〉の木さ登って、そこで一生懸命もぎ方しったところで、あっちからも、 こっちからも鬼が出て来て「人くさい、人くさい」て云いながら、木の上の兄が 見つかって、引ずり下ろさっで、裂 (さ) かっで食 (く) わっでしまったど。
 いつまでも兄が帰って来なかったので、おばんちゃんが心配して、
「鬼にでもやらっだのではないか」て、ほだればて、舎弟がマサカリたがって、
〈あずめのからめ〉もぎながら、兄の安否を尋ねて行ったど。
 行ったれば兄の骨があちこちに散らばっていたど。舎弟は〈あずめのからめ〉 の木さ登っていっぱい実 (な) っていたのをほろっていたところが、あちこちから鬼が 出て来て、
「風吹かねのに、あずめのからめがいっぱい落ちっだ。まだ人いたでないか」て 上を見たら、人がいた。それを見た赤鬼が登って来たところ、マサカリで「えっ」 て切りつけっど、ドダッて落ちた。
 次に青鬼が登って来たので、青鬼の頸をマサカリで「えっ」て切りつけっど、
ドサッて落ちてしまった。
 次には黄色い鬼が登って来たが、そいつもマサカリで頭をやらっで、鬼は皆殺 さっでしまったど。
 舎弟はいっぱい〈あずめのからめ〉を背負って帰ったが、おばんちゃんは大変 喜んだげんども、兄が殺さっだもんだから、さめざめと泣いだど。トービント。
(貝生 工藤勝助)
>>蛇むこむかし 目次へ