瓜姫子と天邪鬼

 むかしあったどな。
 じんさとばんさいたど。瓜ぁ大事にして育 (おが) して、もいで来たれば、そいつが割 れて瓜から子供でたど。そいつば「瓜姫子」て名付 (つ) けて、大事にして育 (おが) したど。
 瓜姫子ぁ機 (はた) おりするようになったれば、
「何か食 (く) たいものないか」て云うたれば、
「トコロ食 (く) だい」て云うたど。そんでトコロ掘りに、じんさとばんさ行ったど。 行くときに、じんさとばんさは瓜姫子さ、
「アマノシャク来たときには、決して戸開けんなよ」て教えて行ったど。アマノ シャクは留守などこ見て来て、
「戸開けてけろ、戸開けてけろ」て云うたど。
「開けんなって云わっだから…」て云うど、
「少し指入るほどでいいから」て少し開けてもらったら、そうすっど、戸をガ ラッーと開けてしまったど。そして瓜姫子を殺してしまって、自分は瓜姫子の衣 裳を着て、瓜姫子をなげて来て、知らぬふりして機おりしったど。そうすっど、 何にも知らねでトコロ掘って来て、食 (か) せんべと思ったれば、皮がらみ食うから、
「皮ぁ食んね」て教えっど、
「皮ぁ皮の薬、毛は毛の薬」て云うて、トロコの皮も剥 (む) かねで、すぐに食ったど。 そうすっど何だか不思議だと思って気付いたれば、娘は殺して自分が娘の衣裳 着ったことわかって、じんさとばんさは、うんと悲しんで泣いだど。
 そこさ人が来て、
「なにしった」て云うから、
「こういうわけだ」て云うたれば、
「ほんじゃ退治してける」て云って、みんなで行ってアマノシャクは殺してけだ ど。そしてカヤんどこ、ずりずり引っぱって歩いたので、カヤの中の蕊が赤くなっ たのだど。
 トービントロロ、さるのまなぐさ毛がはえた、けんけん毛ぬきで抜いたれば、 まんまんまっかな血ができて、めんめんめっこになりました。
(中山 山川嘉之助)
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