笠地蔵(一)

 じさまがツメ(大晦日)に町さ行って、ツメ買いものして来たど。そしたら途 中で地蔵さまが、雨にあたって濡れっだけど。
「こりゃ、むごさい地蔵さま。オレぁ何も持たねんだし」
 どて、自分の褌をとってかぶせて来たど。そして家さ帰って来て、 「ばば、ばば、今日は地蔵さま、あんまりむごさいようだったので、オレぁ褌とっ てかぶせて来た」
 て云うたら、 「なえだ、じさま褌じぁあるもんでない。いかにしたて、衣裳とか何とかだれば だげんど、褌じゃあるもんでない。そのうちに罰あたっから」
 とていたらば、夜に家の前さ、ドガンという音がする。「ほりゃ、そのうちに来 た」て云うて出はってみたれば、すばらしい宝物、葛 (つづら) さ入っていたっけど。
「さっき、うんと親切になったお礼に、少しばりだげんど置いて行 (い) んから、使っ てけろ」
 あけてみたれば、さまざまな宝物いっぱい置いて行ったんだけど。トービント。
(貝生 工藤兵次)
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