98 山鳥女房

 むかしむかし、ある若者が用達し行って帰って来っど思ったれば、バダバダ、バダバダて音する。何だと思ったれば、ほのキジがワナさかかって、ししゃます(手を余して)しったけど。
「はぁ、可哀そうだ、ほに」
 ていうわけで、ほのキジばワナからはずして()で、ほして、はさまっだどこ、ほれ撫でて呉たぐらいにして、飛ばしてやった。それから二、三日おもったれば、やっぱりきれいな女の人が、
「どうか一晩だけ泊めてけらっしゃい」
 て来たって。ほして夕方も、
「おれ遅いもんだから、他さ行って泊らっしゃい」
 ても()んねくて、ほんではていうわけで、根がやさしい人なもんだから、泊めた。ところが、
「おれ、機織っから、機織りの機師こしゃえでけらっしゃい」
 て言うたって。ほして機師こしゃえでけだれば、次の日から機織り始めた。ほんどき、
「おれ、機織ったどこだけ、決して見ねでけろな」
 て、ほして三日ばりおもったらば、
「織り上がったがらって」て、機師からはずして持ってきた。いや、はいつの布地のきれいなこと、見たこともない。はいつ町さ持って行って売ったれば、すばらしい高く売っだ。ほしたけぁ、欲出てきて、ほの若者は、
「いま一反織ってもらわんねべか」
 て言うたって。
「はい」
 て、まず引受けて、またトンカラリン、トンカラリンて織り始めた。んだげんど、あだえ、ええな、なぜして織んなだべと思ってそっと梁の上さあがって見たれば、自分の羽根ば一本一本とって、キジが織っていだんだけど。ほうしたけぁ、ほのキジは、
「いや、みにくいどこ見らっでしまった。実は四、五日前、あなたに助けてもらったキジだった。恩返ししたくて、お宅さお上りしたんだげんど、こういうみにくい体見らっでから、長居するわけに行かねっだな、おさらばでございますはぁ」
 ていうわけで、キジは飛ぶもさんねくてはぁ、タタタタて走って居ねぐなってしまったど。んだから、見んなて()っだどこは、決して見るもんでないどて言うたもんだけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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