91 まま子ともぐらむかしむかし、ある村に百姓家あって、ほこのおかちゃんが継母なんだけど。ところが来る日も来る日も雨降らね、ほして堤に何だか水たっぷりあっても、さっぱり水流っで来ね。ほのおかちゃんが、おっつぁんに、「水かけておけな」て、いつでも言っで、おっつぁんが別などこさ用達しに行ぐ。行ってみても水さっぱり来ねがら、掛けらんね。干ったまんまでは何とも仕様ないもんだから、ほのまま子さ、先腹の子さ、「お前、水かけて来い、ほんねど飯まんま食せねぞ」だの、「家さ置かねぞ」なのて言 「ああ、おかちゃんが、こだんどこで、おれさ水かけろなて、困ったもんだなぁ」 と思っていた。ほうしたら、モグラが蛇に呑まれっどこでいだっけ。いまつうとで呑まれっどこでいた。はいつ蛇ば放してやって、ほしてモグラば助けて呉 ほして、ほこさ心配顔して、久しくいだれば、こんど別な大きなモグラきて、 「家の子ども助けてもらって、どうもありがとうございました。何かあなた心配そうな顔してござっけんども、何か心配ごとでもあるんだか」 て聞いたらば、 「いや、実は、おかちゃんに田さ水かけて来 「ほだな簡単だ。おらだの仲間、みなして今、堤さ孔あけて、水出してあげっから、かけらっしゃい」て。 「ほだごとしたら、あの蛇にやっつけらんねか、ここの蛇に」 「いや、ここにはすばらしく大きい蛇いだげんども、おらだは数はいっぱいいだ。何とかなんべ」 ていうわけで、ほしてモグラだ、一生懸命モグラ一族だ、ほこ掘って、水、どうと流して呉 ところが蛇は困ったこと始まった。一つ二つの孔だら、ふさぎようもあっけんども、何百匹の、何千匹ていうモグラに孔あけらっだもんだから、蓋しようも何もない。とうとう水のないどころに、沼のないところに蛇はいらんねくて、どこかさ行ってしまったはぁ。ほして、まま子はほこさ、ゆうゆうと水かけて、家さ行った。ところが家では水なのかけて来ねど思って、 「千刈田さ水かけて来たか」 「はい、かけてきました」 「嘘ばり」 行ってみたれば、並々かがった。あだな一滴もないどっから、あだえ大きい沼から、こだえかけるにゃ、神かがりだべていうわけで、まま母も、いたく後悔して、「いや、おれ悪れがった」ていうわけで、ほしてあやまって、家内中仲よく暮した。またモグラだも蛇いねぐなってはぁ、またゆうゆうとほこで暮すいようになったけど。どんぴんからりん、すっからりん。 |
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