85 猿と(ぴっき)の寄合餅

 むかしむかし、お猿さんと蛙と山で一緒になった。ほしていろいろ世間話語りながら行ったれば、ほこさ餅米三升ばっかり落っでいだっけ。間もなく行ったれば臼落っでいだっけ。二人は餅搗いたところが、猿ぁ蛙さ食せんな、いたましくなった。
「蛙どの、蛙どの、かいつ山の上から沢まで転がして、臼転がして行って、早く着いだ人食うこすんべね」
 て言うた。いや蛙は、何とも仕様ないと思って、さっぱり御馳走ならんねど思っていた。ほして臼の餅ぁ搗いて搗き上がったれば、猿、いきなり臼ば横にしたけぁ、ごろごろ、ごろごろ転がし始めた。その早いごと。蛙はぺたりぺたりて、なんぼ本気になって追いかけてもわかんねがった。ほして途中まで行ったれば、そっくり餅落っでいだっけど。
「ああ、ええがったこりゃ」
 ていうわけで、ほこで蛙ぁ餅拾ったんだど。ほうしたれば、どんどん、どんどん臼転がして行って、沢まで行ってみたれば餅さっぱりないわけだ。
「いやいや、困った。途中さ落したこりゃ」
 ていうわけで、臼の跡ついたどこ猿ぁ一生懸命もどって来た。ほして来てみたら、ちゃんと蛙どのは拾っていだっけはぁ。
「蛙どの、蛙どの、つうと(少し)おれさも呉ろ」
「なんだ、お前が、拾った人のものていうことに約束したんだべな。お前から言って、ほだな話ざぁないっだな」
「いや、何とか、何とか」
 て願わっで、ほんではていうわけで、千切ってポーンてぶなげてやったらば、(ほっ)たぶさペターッとふっついた。
「あつい、あつい、あつい」
 て言うて、それから猿のほったぶ赤くなったんだけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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