73 猿聟入むかしむかし、日でり続いて日でり続いて、田さ水かからねくて、ある部落でも千刈田さポタッとも水かからねくて困っていたじんつぁいだった。ところがそこさ山から猿降りてきて、 「じんつぁ、じんつぁ、水欲しいか」 「いやぁ、水欲しいげんど」 「んだらば、お前に娘三人いたずだ、どれか一人、おれさ呉 田、みな亀の子の背中みたいに割 「上げあんす」 ていうた。ほして家さ来たげんども、じんつぁ御飯食ねので、 「なしておまま食ね」 ていうたら、 「こうこう、こういうわけで、猿と約束して来た。一番大きい姉ちゃん、お前行って呉 て言うたれば、 「おれぁ、ここの後とりだから、やんだ」 二番目の姉ちゃんも、 「姉ちゃん嫌んだどこなの、おれも嫌んだ」 て言うて、 「ほんでは、おれ行ぐっだな」 て、三番目の娘が行ぐようになった。ほして猿さ嫁入りした。丁度三月の節句のとき、里帰りとなった。ほして里帰りだから、 「里帰りていうな、人間の社会では餅搗いて、餅背負って行くなだ」 て、嫁が数えた。んだかて言うわけで、猿ぁ一生懸命餅搗いた。 「ほんでは重箱さ入っで持って行んか」 て言うたれば、 「いや、おら家のおっつぁんつぁ、重箱の漆の匂い大嫌いだ」 「ほんでは鍋さ」 「いや、鍋は鉄くさくて駄目だ」 「ほんでは、何…」 「臼がらみ背負ってけらっしゃい」 て、猿は臼がらみ背負った。ほうしてずうっと来たれば、川あって橋渡って、ほのガケぷちさ、すばらしいきれいな桜咲いっだった。 「あの桜、土産にもって行きたいげんど、とって呉らんねべか」 て言うたら、 「ああ、あだな、採って呉る」 ていうわけで、「んでは、臼、こさ置いて」て言うたれば、娘は、 「いや、臼、土さ置くど土くさくなっから、背負ったまま登ってけらっしゃい」 て言 「ほこら、下でわかんね。シンポ、いちばん、きれいだ」 ていうわけで、シンポエまで登って行くうちはぁ、ほのガケからドブンと川さ落っで、臼軽こいもんだし、臼さ結 |
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