125 米福と粟福むかし、ある村に米福と粟福ていう女の姉妹二人いだっけど。ほして米福が姉ちゃんで粟福が妹。姉ちゃんは先妻の子どもで、粟福が後おかちゃんの子ども。んで、米福に対しては今のおかちゃんが継母てなるわけだけど。て、ある時、おかちゃんが、つねがね粟福ばりめんごくて、米福めんごくなくて仕様なくて、いじめいじめしった。して、今日も今日とて、 「山さ行って栗拾ってこい」 ほして米福さあずけたハケゴは底なし、粟福さあずけたハケゴは、ええハケゴあずけた。ほして、粟福さ言うには、 「米福の後歩け、後歩いたばりでも拾うい」 はいつなしてだかて言うど、米福は生来真面目で、一生けんめいで拾う、拾うたな皆ハケゴさ入れる。入れっどハケゴから底ないから落ちる。はいつ拾ったばりで、お前たくさんだて教えたわけだ。ほうしてやっぱり米福は一生けんめい拾った。拾ってみても溜らね、溜らねはずだ底抜けてる。その後行ってはぁ、粟福はたちまちハケゴさだっぷりになって、家さもどったはぁ。米福は泣き泣き拾っても拾っても、ほれ、落っでしまってわかんね。 「こいっちゃ一つなんねうちはぁ、家さ来てなんね」 て言っだんだし、何とも仕様なくていた。ところが夕方なったれば幻のように、夢にまで見た自分のおかちゃんが現わっで、 「米福、何も心配すんな、お前さおれついでいっから、大丈夫だ」 て言うて、ほして、着物みたいな呉 「こいつ底にして持って行げ、今から暗くなっては栗など、ほだえ拾わんねげんども、お前これから拾った栗ば、家さ行って、箕さあけたり、蓆さあけたりすっど、たちまちいっぱいなっから、ほしてこの着物はお祭りの時に着て行げよ」 て言うて、打ちかけみたいなきれいな呉 「おかちゃん、今来たっす」て言うた。 「何だ、いっぱい拾ってきたか」「はい」「箕出してあけてみろ」 あけてみたれば、粟福よりずっとええ栗いっぱい拾って来た。 「何だ、他人 なて、いっぱい拾ってくっど盗んできた、拾って来ないど拾って来ねていじめられる。んでも賢こい米福は、「はい、はい」てばり言うて、何一つ弁解しねがった。ところがいよいよもって秋祭り、祭りになった。秋祭りには、ほんどき着飾って行った娘ば男衆見でて、「あいつ嫁に欲しい」とか「かいつ嫁に欲しい」どかていう習わしだった。ほして秋祭りさ粟福とおかちゃんが着飾ってはぁ、 「ほんではお祭りの屋台見にでも行くべはぁ」 ていうわけで、ほんどき米福さ、 「お前ええか、これから米ひいて搗いて、といで、はいつ御飯にして、明日ちゃんと食うように準備して、ほれからでないど来てなんねぇぞ、ええか」 ていうわけで、仕事山ほど言いつけて行ってしまったはぁ。 「おれなの、お祭りさなの行かんねっだなはぁ、米ひいて搗いてなて言うど一晩でなの出っか出ねかわかんねっだなはぁ」 て心配しった。ところがほこさ友だちがきて、 「米福さん、歩 つねがね、こころもちええ米福だから友だちいっぱい居た。 「こういうわけで、仕事いっぱいあずけらっで」 「おらだ手伝っだなぁ」 て、四、五人も来て、米ひき、米搗き、みな手伝った。たちまち出てしまった。ほして自分だ、ほれ白粉つけたりして粟福とおかちゃん出はって行ったげんど、白粉一つない。んだげんども、幻のように出てきたおかちゃん、「かいつ着て行げ」てよこした、ほのハケゴの底にした着物、ふぁっと羽織ってみたれば、何とすばらしい目覚めるような美人になった。 「あらら、米福ええ女になった」 て、ほうしてみんなに魂消らっだ。ほしてお祭りさ行って見たれば、粟福が見 「あら、おかちゃん、米福姉ちゃん来たみたいだ」 て言うたれば、 「何、来っど、あだな来られるわけないっだな、あれほど仕事言いつけて来たんだから、大丈夫だ」 見向きもしねがった。ところが屋台見どころか、出しの踊り見どこでない、ほの米福の器量ええのさ、みな見とれてしまって、うっとりとしてしまった。ほこさお祭り見来った町一番の長者の息子が米福見て一目惚れしてしまった。 「あいつぁ、どこの娘だ」 次の日、いきなり使者立てて、もらいに来た。ところが継母は、ほれ、化粧してええもの着せて行ったべし、米福は行かね勘定だべしすっからて、 「おらえの粟福か」て言うたら、「いや、米福だ」「粟福だべな」「米福だ」ていうて、ほして何とも仕様なくて、「ほんでは米福だな」ていうわけで、 「ははぁ、こころ根がやさしいと、きれいに見えるのかなぁ」ていうので、ほこのおかちゃんが、改心して、米福さええ仕度して嫁入りさせて、ほれから粟福と、ええおかちゃんになって二人で暮したけど。どんぴんからりん、すっからりん。 |
>>蛤姫(下) 目次へ |