124 舌切り雀

 むかしむかし、じんつぁとばんちゃいだっけど。ほしてそのじんつぁがとっても雀かわいがっていた。ほして、「ほらほら、おまま食え、ほらほら粟だ、稗だ」て()せっだ。ところがある天気のええ日、ばんちゃ、着物さ糊つけんべと思って、糊練っておいだ。ところがほの糊みな舐めてしまった。ほしたれば、ばんちゃごしゃえで、ほの雀の(べろ)切ってしまったんだどはぁ。ほうして雀は痛っだくてはぁ、チュルンチュルン、チュルンて泣いではぁ、どこどもなく行ってしまった。
 ほして、じんつぁ、稼ぎに行って来て、雀いねがら、
「ばんちゃ、ばんちゃ、雀どさ行ったこりゃ」て聞いてみたれば、
「あの畜生め、糊なめあがったから、おれぁ、舌切って飛ばしてやったはぁ」
「ああ、かわいそうなことした、おれ行って見んなね」
 て、ほのじんつぁ、次の日、舌切らっだ雀ば探しに行った。竹やぶから竹やぶさずうっと、〈ここらいねべか、あそこらいねべか〉て、「舌切り雀、お宿はどこだ」て、ずうっと行ったれば、いだっけど。ほして雀だ、いっぱいいて、ほして子雀、親雀だ居て、ほしてほのじんつぁば迎え出て()で、ほして、
「こっちゃ、ござっさい」ていうわけで、雀の宿さ行ったわけだ。ほうして、
「ほの雀は御厄介になって、じんつぁにめんどうみてもらった」ていう。さぁ、酒よ料理よて、大変いろいろ御馳走になって、
「ほんでは家さ帰んなねはぁ、ばんちゃ心配すっどなんねから」て家さ帰っどき、
「ほんではお土産あげっから、重たいツヅラええべか、軽いツヅラええべか」
 て聞いた。
「おれぁ、年取って重たいななて背負わんねから、軽いなでええごではぁ」
 ていうわけで、「ほうか」ていうわけで、軽いツヅラ背負わせてよこした。ほしてドッコイ、ドッコイと家さ来て、はいつ開けてみたれば銭と金いっぱい入ったけ。はいつ見っだばんちゃ、「よし、ほんでは、おれも」て言うわけで、「舌切り雀、お宿はどこだ」て、じんつぁに()っだとおり行ったれば、やっぱり宿があって、ほごで御馳走さまになった。ほして帰り、
「ばんちゃ、ばんちゃ、重たいツヅラええか、軽いツヅラええか」
 て聞いだれば、
「おれぁ体丈夫だもの、軽いないらねっだな、重だいなっだな」
 ぎっしり重たいなツヅラもらって背負ってきた。ほして、家まで来んな待っでいらんねくて、途中で開けてみた。ほうしたればはいつから、蛇、蛙、かなちょろ、なめくじなて、ばんちゃの嫌いなものばり、いっぱい出はって、あげくのはて、蜂まで出はって、ばんちゃ刺さっだけて。んだから、あんまり、鳥いじめたり、欲ふかくしたりさんねもんだていうたけど。どんぴんからりん、すっからりん。
>>蛤姫(下) 目次へ