104 神ない話

 むかしむかし、ある時、和尚さま法事さ招ばっで帰り道、餓鬼べら一生懸命、川さ小便たっでだ。
「こらこら、お前だ川さ小便たっだりするもんでない。下流にいた人、うんと迷惑すんぞ」
 したら、いきなり向き変えて、こんどは畠の方さたっだ。
「こらこら、畑さもたれるもんでない。畑には畑の神さま、川には川の神さま、山には山の神さまていうないるんだ」
「ほんでは、和尚さま、どさたれっどええんだ」
 て言うた。
「神のないどこさ、たれらんなね」
 て言うたけぁ、いきなり一人の我鬼ぁするすると木の上さのぼって行ったけぁ、和尚の頭さ小便ひっかけだ。
「こらこら、何だ、おれの頭さ小便ひっかけて」
 て言うたれば、
「和尚さんの頭に髪一本もないから、髪一本もないどこさたれろていうから、我慢さんねぐなったから、いきなりたっだ」
 て言うたけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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