138 狸の化物

 むかしとんとんあったんだど。
 ある部落で炭焼きしった若い男がいだんだけど。ところがある晩、何だか炭焼けねくて焼けねくて、炭竃大きくなった。そして丁度いつ頃、青木入れっかなぁ、て見っだれば、表からそわそわしったけぁ、きれいな女来た。そして小屋さ座った。ところが女は準備ええくてはぁ、股間の茂み出して来たはぁ。若いもんだから、ムラムラとその気になったげんども、
「いや、待てしばし。妖怪変化になの、パクリやらっだんでは元も子もない」
 と思っていた。そして知しゃねふりして、炭火箸を焼いて、もしかしたらこれで、突いでくれんべていう気持で、金(かね)火箸焼いっだ。そのうち、小屋、藁で葺(ふ)いっだもんだから、上から稲の穂落っできて、そいつがパインとはんづけだけぁ、そこさ入って行ったけぁ、モグモグなて、はいつ食った。
「これはおかしい」
 て、その焼火箸、いきなりそこさ入っで呉たれば、ギャッと言うたけぁ、ひっくり返って二匹かさなって化けて来た、すばらしく大きい狸だけど。はいつ、ほれ、鼻の下長くして、「どれ姉(あね)ちゃん」なて言うんだら、パックリ食(か)っでいだけどはぁ。どんぴんからりん、すっからりん。
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