129 田吾作

 あるところの百姓の息子とおっつぁんが田んぼで小便たれはじめた。ほしたけぁおっつぁん言うには、
「田吾作や、お前なんだって情けない小便のたれ方する。両方の手でおさえて小便たれんなねような元気のないことでは分らね。おらだ若い頃にゃなぁ、小便たれながら腰からドーラン、ちょえっとはずして、煙草を喫って、ほして煙草喫い終ったら、煙草の喫殻はたき、チョンチョコでしたもんだ。パエンパエンと。んだどチョンチョコのしづくは落るし、キセルの灰は落ちっし、なんだまず、お前の小便のたれ方、両手で押えていねど、くたらっとして分らねのでないか」
 したれば、田吾作は、
「いやいや、おっつぁん、違う。今あんまり元気よすぎて顔さはじげっからよ。手でおさえていんなねのだ」
 て言うたけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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