125 蟻と鳩

 むかしとんとんあったずま。
 蟻コは何のわけだか、急に風に吹がっで、大きい池さ落っでってはぁ、アップアップしったんだど。いま少しで死ぬようになってしまったんだど。はいつ空とんでた鳩が見つけて、
「ああ、蟻コおぼれそうだ。ありゃ、可哀そうだ。助けんなね」
 ていうわけで、木の葉っぱ喰わえでって、蟻んどこさそおっと置いで呉だんだど。蟻コはその木の葉さようやく上がって、そして、
「ああ、こりゃ生命拾いした」
 て、喜んでいた。そこさ一尽の風がふぁっと吹いて来て、岸さ寄せらっで、ようやく蟻コが岸さ上がることができた。
 ところがある日、蟻コが気付いてみたら、鳩が狩人にねらわっでだ。いま少しで火縄銃の引金ひくとこでいた。はいつ見た蟻コ、いきなり行って、その狩人の足、いきなり食いついて呉(け)だ。ほうしたれば、引金ひく時なもんだから、「痛い」と思って、引金ひいたもんだから、玉どっちゃか吹っとんで行ってしまった。ドガンと音したもんだから、鳩ぶったまげてとんで行った。ほして、鳩も蟻コも生命拾いしたけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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