114 蛙と牛

 むかしむかし、ちょっとした沼があって、そこに蛙が五匹住んでいだんだけど。ところがやせ蛙、それよりも少し肥った蛙、蛙が五匹いだった。ところが一番太い蛙が、やっぱり相撲とっても何しても、草引きしても一番つよい。お互いに草食わえて引張りっこする。それでも一番強い。蓮の葉の上で相撲とっても一番つよい。一匹、二匹、三匹て、四匹ぐらい必ず投げる。そしてまた言うことも、でっかい。おれぐらい偉いな居ねし、自分くらい大きな、世の中にいない勘定してた。
 ところがある時、ノッシノッシと、そこへ牛がやって来た。はいつ見っだけぁ他の蛙だち、ぶったまげた。
「いやいや、うちの一番大きな蛙くらい大きな見たことないと思ったら、はいつの何十倍とある。うわぁ大したもんだ」
 と思って、みなぶったまげてはぁ、沼の中さもぐって行った。そん時、どこさ遊び行ったかノコノコ帰って来た一番大きな蛙と出会った。
「いやいや、すばらしい大きいもの見た」
「何だ」
「何だか分らねげんど、角二本あって、すばらしく大きいっけ」
「このぐらいだっけか」
 腹ふくらかしてみた。
「ほだごんで、きかね」「んじゃ、このぐらいか」「まだまだ」「いまとが」
 腹いっぱいふくらかした。
「まだまだ、大きい」て言うど、パチンと言うたけぁ、蛙パンクしてしまった。んだから世の中にはまだまだ大きいもの、自分が一番大きい、偉いと思ったて、まだ偉い者、大きい者がいっから、あんまり自慢ざぁするもんでないど。どんぴんからりん、すっからりん。
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