104 東山の馬鹿聟 ― 団子聟 ―

 むかしとんとんあったずま。
 東山に馬鹿聟いて、ほして馬鹿聟、友だちさ招(よ)ばっで団子御馳走なった。醤油団子・ヌタ団子。むやみにうまい。団子はじめて食ったもんだから、
「かいつぁ、何(なえ)ていうもんだ」
 て聞いたら、
「かいつぁ団子ていうもんだ」
「はぁ、ほうか、こだいうまいもの初めて御馳走なった。ほんでは家さ行って、おれも拵(こしゃ)えでもらって、御馳走ならんなね」
 て言うわけで、
「なえて言うたけぁりゃ」て聞いだ。「団子だったら」「ほだ、団子だ、団子…」
 て来るうちに、堰コあっけぁ、堰コ跳(は)ねっどて、「ドッコイ」ていうた。ほれからドッコイになってしまった。「ドッコイ、ドッコイ」て家さ来て、
「かあちゃん、かあちゃん、ドッコイ拵えて食せろ」
「なんだず、ドッコイなて聞いたことない」
「ありゃうまいなよ、小豆ドッコイだの、ほれ、ヌタドッコイだのてあんべ」
「なあに、ほだな聞いたことないな」
「聞いたことないなんて、にさ(お前)、女でないか。女で料理もさんないなて、とんでもない女(へな)だ」
「……」
「ドッコイよ、ほれ、ドッコイ、あだいうまいなドッコイよ」
「分んねず」
「ううん、うん、ごしゃげだごど」
 て言うけぁ、鍵、いきなりかあちゃんの頭さぶっつけてしまったんだど。したれば、「痛(いた)いこだ、痛(い)っだいこだ。団子みたいなコブ出たどこりゃ」て言うたら、
「ああ、ほだほだ、ほの団子だった」
 て言うたけど。どんぴんからりん、すっからりん。
(団子聟362)
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