20 早口ことばと昔々

 年寄が子どもをあやすとき、また子守するとき、よく歌っては子どもをよろこばせたのが、「早口ことば」の遊びである。その由来は、むかし、百姓に子どもが生れ、立身出世をねがって庄屋に名前をたのんだ。そこでなるべく長い名前がいいというので、えりこのんで長い名前をつけた。
「百千万万、千万万、兆吉兆、兆吉兆、ちょうぎの別当、スットントン、ちょうけりけっぽの又次郎、粟搗く稗搗く、肥後(へんご)の守、ぐるぐる舞の弥兵五郎」
 ところが、ある時、子どもが誤をして井戸に落ちた。人手を集めるのに、あまり名前が長いので、知らすのに時間がかかり、ついつい一命を落したという「むがし」がのこっている。このむがしに出てくる子どもの名前は語り手によって違った早口ことばが使われ、中には瞽女の遺産である古代神系の唄まで転用され、それを酒席の笑い芸にする人さえあった。

  ピッチピーカラカラ レンチャラポ レッチャヘッカ スッコッコ キッコモッコ ギロマイタ

  ジギョキョ ジギョキョ 油こうじのまっこうじ すいたかすいたか 新左衛門の ヒョッコラヒョの兵木郎さん

  カンキンタラ メンタラリット カンキン シモック シッペシッタ コンバカリン カンキン

  ピーピーガラガラ レーチンボ レーチャーハーカー ギッコーボ
  ギッコーモッコー ギヲマエテ アカタカ ハカタカ スッペンペー

  ドンビツカラビツ スッカラビッ スカスカキンカノ キンプクリンノグーヅ グーヅ

  一びり 二ンびり 三だいびりびり 四日の松原うちにして チョンチョン合せて うりがねのくりがねの とりはたったる竜の峯 刀の小反のぎいはぎっと申せば、ぎいりき源内弥兵衛左ヱ門

  東京立つ時ぁやァ やよせーコロコロセー さんこの種サンコロリンコロリンサイナー はぁリンサイナ リンサイナ コロリンコロリン リンサイナー

  裏の抹香の木さ 百舌(もず)ァ巣をかぁけた
  何とさえずる 立ち寄りきけば
    君はケンクリケンクリ クリクリメンチョのスッペンスル
    ワァシクメョード ワニョドクサーサ
    ビックリガラスのショーギリショーギリ ショガラリンと囀ずる
    そりゃ まだモッケダデンダデノー

  裏の山椒の木さ 百舌ァ巣をかけて
  何と囀ずる 立ち寄りきけば
  ※ 君にゃエックリキャックリ キャックリシントコ リントコだが
    車の中のあーやだが さァさ ビンナン チョンナンチョンガラリット
    するわいなっと おっしゃいまーす
    どれーだよ どれーだよ
  ※ 君にエックリケエックリ ケエックリマエだか、リントウだが
    車の中のあよだか さァさ ビックリタラヅク フクトクデンジ
    ビンナンするわいなっと 囀えずる鳥
  ※ 常にヒックリキャクル チャクル見えたが リントンカンだが
    車の中のワエだか ビンナン チンナン チルワイナーと仰しゃーます
    鳥こやんでいる

>>安楽城の伝承 目次へ