16 雪隠神さま

 昔あったけど。雪隠神さまどてな、ああ居だども、居だども。雪隠さだてどさだて、神さまいなさる。しかも、とっても顔立のめんごげだ神さまだど。
 ホラ、年越しの晩方、家内中みんなの分の眼ば、紙さ描くが、藁ミゴで眼鏡みでえな輪こさえだりして、雪隠のそばの板張(のしだて)さ貼りつけんべ。ほさ、こ餅あげ、お灯明ともして拝んでるな気付かないが。お前の家では、ほだごどしなえが。
 この神さまは場所柄に似合わないで、とてもきれいなのが好きだそうだ。よぐ信心すっと、あかめちょ(コマトラ)などかからないし、流行眼病(はやりやんめ)もとっ払って呉(け)る神さまだど。ほれさ何時も雪隠ばきれいに掃除する人ば良え所さ縁づかせで呉れっちゅし、後でめんごげだおぼこももせ。んと幸せにして呉れっと。んださげて娘こん時がら、雪隠掃除を嫌(やん)だから、なえでしなんなえもんだぞ。
 とごろで、勘定しに行て、壺の中さ唾(したけ)ばするものでない。糞(ばば)だて小便だて、どっち転んでもきたない甲乙はないよなもんだどもな。唾されっと、神さま余分な仕事ができて、困てしまうなだけど。神さまがいつも糞つぼに構えていられる。上がらねぎばて(踏張る)たれられっと、ほれさ手さしのべて受げ止めっさげてな。
 片手(かたひら)では糞ば、もう片手では小便は受げんども、ほごさ唾されっど、こんど受ける手なぐなて、やむを得なえ口開げて受けねばなんなぐなっど。これがら気つけて、神さまさ、余計なめいわくはかげなえこったな。
 どんぺからんこ なえけど。

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