4 姉と妹の豆煎りくらべ

 昔あったけど。或時(あっづき)、姉妹二人、囲炉裏端で、薪さつくべて、釜こ歌わへながら、暖ったけど。
「釜こ歌うど、福逃げで隣家ばり福しぐなる」
て言たもんだ。火もったいない。どうせただ温てんなら、豆煎りでもしろちゃ、今晩、寄合(よりぎ)宿あだてっさげ、お茶うげも要(よ)だ。どて、親だち煎鍋と大豆出してきて、姉妹二人さ預げだけど。んでや、二人で豆半分ずつ分げで煎り競争(くらえご)しんべどなた風だ。
 まず、姉は姉の分際どして妹えなど負けてらんなえていう気起して、やっきどなたけべ。かぎのはなさ鍋ばかけるや早ぐ、薪火でば、だがすか(勢よく)ど燃して煎ったどごだど。火強くて、たちまち黒こげなてしまたなで、ホリャ煎れだじょんで、大急ぎで鍋がら豆あげだべ。んでも芯まで火通てなくて、食てみっと、生臭えがっだど。
 妹の方は、どっちがて言えば、姉より気持おっとりとしてっか、あわてないで、遠火で、鍋ン中の豆プリンて音立てっと、カランコロンと掻廻していたじょん。そうやっと、豆のふ切れで良ぐ煎れるわけだ。黒こげなの一粒も出さなぇし、ほれさちっとも生臭ぐなどなえべじゅ。
 これば見でだ親達言うけど。物にゃ何でも加減じゅあるもんだ。強いなの、早いなのばり良えどしたもんでなえ。姉の方は負げらんなえ一途から、らっぱ気出して、しくじり、軍配は妹の方ちゃ上たもんだな、て言うたけど。
 どんぺからんこ なえけど。

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