1 正月の田の草取り

 昔あったけど。囲炉裏(ゆろり)汚しておぐど、田さ雑草(くさ)生えっどてな。囲炉裏の掃除ば、嫁この持ち前に決めでる家あっど。
 そごの家でや、まず朝間起(おぎ)っど一番に灰(あく)としすんなだど。灰ならし使て、さなぶりン時(づき)の田圃(ともで)みでえにきれいにならして、そさ塩水ぶっかけで清める。ほのくらえ気つけたもんだ。
 あっづきな、爺さま、嫁こ連れで、二人で田圃さ稼ぎ行ぐごとなてたけど。でもにわかえ用事出来で、嫁こひとり田の草取りやたどごだど。
 一番草、二番草はねつぐ取れていうもんだども、「三番草と十八娘は、かんなぐり放題」ていうて、留草なっと掻廻しただけで良えもんだ、て、教(おへ)でやたけど。んださげ嫁こもほの気組でとっかがたべちゃ。
 やがて夜上りして来たでば、爺さま、さっそぐ、「ひとりで楽(らく)がったべ。どごまではがえった(進んだ)がな」て聞いだど。嫁こまだ「仏草と祝い草残して、そそくさど出来したどこして、上がて来たどこです」て言うけど。
 えごは仏さまの鏡どて、仏さまの大好物だていうたもんだ。んださげ、えご草ば仏草だ。まだ沢瀉は祝い草じゅもんでな。祝言の時、和紙で沢瀉の花こさえで、島台さ飾て祝うべちゃ。ほれ二つはわざと取らなえで残してきたという。嫁の頓智の良えなにゃ、爺さまもにっこりしたけど。
 とにかく、囲炉裏ばいつもめんごげしておかなえど、田の草生えらったら大変ださげな。小正月の十五日の晩に、百姓家でやどごでも「田の草取り」どて、囲炉裏の大掃除すってや。
 明りうちに、屋外(おにや)で雪中田植して、晩げにゃ田の草取っとこだべ。遅ぐに寝しな、そこの家の田さ下る稼手(かへぎて)みんなの手借りて、囲炉裏の灰ならしする。春に学校卒業すん者(な)いっと、「今春(はる)から大人さかざて田さ入らなんなえさげ」どて、寝だなも起ごさって灰ならし持ださったんだ。
 田の草取りすまへだら、「杭(くい)掛げ」どて、串刺の田楽餅でお祝いする家もあってや。明げれば、童たちの鳥追いだじゅんだ。百姓のまつりも、昔ぁみな順序あってしたもんだ。
 どんぺからんこ なえけど。

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